メタバースと暗号通貨・NFT。親和性の高さといくつかの誤解
日本や世界を代表する企業が取り組みを進め、にわかに注目を集める「メタバース」という言葉。その定義は人によってさまざまですが、親和性が高い技術として注目されているのが、暗号通貨（仮想通貨）やNFTなどのブロックチェーン関連技術です。
メタバースにおいて暗号通貨やNFTはどう活用されようとしているのか、またはその課題について解説します。
メタバースとは
まずは、メタバースという言葉の意味や使われ方を解説します。
メタバースとは、インターネット上にある仮想空間のことを指します。一般的には、アバターを操作して他人とコミュニケーションを取ったり、ゲームを遊んだり、ショッピングをしたりといった、現実に近い体験が可能な空間をメタバースと呼んでいます。
とはいえ、メタバースという概念に明確な定義はなく、企業や運営主体によってメタバースが意味するところは微妙に異なります。VRや暗号通貨などが有力な技術として取り上げられていますが、それらは必ずしも必要なものではありません。
メタバースで暗号通貨やNFTが注目される理由
ここからは、暗号通貨やNFTがメタバースで注目される理由を2つ紹介します。
暗号通貨取引によるコスト減
メタバースでは、金銭のやり取りが発生する取引も想定されています。もちろん、これまでのネットショッピングのように円やドルを使って買い物をすることもあるでしょう。その一方で、既存の通貨とは異なる支払手段として注目を集めているのが暗号通貨です。
暗号通貨とは、インターネット上でやり取りされる電子通貨のことです。円やドルのように国や地域を管理者としないのが特徴で、生成や取引などは多くの場合、ブロックチェーンと呼ばれる改ざんが困難な仕組みを利用して利用者自身が相互に管理します。
既存通貨での取引では、売り手と買い手がお金を直接やり取りをしているように見えても、途中で銀行やクレジットカード会社、その他仲介業者を経由することになり、それぞれの場面で手数料が徴収されます。その手数料は買い手や売り手が負担することになるため、商品の価格に転嫁されたり、得られる利益が削られたりといった状況が発生します。
暗号通貨では、利用者同士が直接やり取りすることができます。そのため、コストは既存通貨と比べて低くなり、買い手はより安く、売り手はより多くの利益を得られるようになるとされています。
NFTでデジタルデータの流通をスムーズに
さらにキーとなるのが「NFT」の存在です。NFTは「non-fungible token」の略であり、日本語に訳すと「非代替性トークン」です。暗号通貨と同様にブロックチェーンを活用し、デジタル上で「代えの効かない唯一の物ですよ」と証明できるとされています。
NFTは、これまで本物であることの証明が難しかったデジタルデータでの活用が進んでいます。デジタルデータとは、例えば写真やイラスト、音楽、オンラインゲームのアイテムなどがあります。NFTは基本的に暗号通貨で売買されます。
メタバースでは、自らのアバターを着せ替えたり、装飾品を身に着けたりする楽しみ方が想定されます。そのためのアイテムがNFT化されていれば、ユーザー同士で直接売買することができます。メタバース内ゲームの賞品として発行された限定NFTを求め、多くのユーザーが集まるなんてこともあるかもしれません。
暗号通貨やNFTを取り入れる上での課題は
価格の乱高下
暗号通貨が人々を惹きつけるのは、必ずしも「新しい通貨として注目しているから」というだけのことではないでしょう。既存通貨と比較してダイナミックな価格変動を特徴とする暗号通貨は、その投機性ゆえに多くの投資家を魅了し続けてきました。NFTも同様です。
メタバースがデフォルトの支払手段を暗号通貨とした場合、そこで取引されるNFTなどの商品を投資の対象とみなして参入する投資家も現れることでしょう。
適度に流通する分には市場の活性化という意味で好ましい現象かもしれませんが、投資の側面があまりに強くなってしまうと、純粋にメタバースを楽しみたいユーザーに敬遠されてしまう可能性もあります。
NFTの相互利用は進むのか
NFTはブロックチェーンに記録されており、そのNFTが使用可能だったサービスが終了したとしても消えることはありません。サービスを越えて持ち運ぶことも可能で、アイテムをNFT化して販売する「NFTゲーム」ではそれを売り文句にしているところもあります。
一方で、NFTの持ち運びには相互のサービスが連携している必要があります。今の時点で各社のメタバースがどこまで連携するかは不明であるものの、それぞれが独立した形で運営されるのであれば、NFTがあっという間に紙くずになるリスクもあります。
終わりに
メタバースの発展において、商取引が可能な仕組みを整備することは欠かすことはできません。その中で暗号通貨やNFTの活用は大きな役割を果たすと期待する向きもあります。
とはいえ、メタバースにおいて暗号通貨やNFTは必ずしも必要なわけではなく、既存のオンライン取引の延長線上で円やドルを使う手段のほうが、馴染みがあり参加を促しやすいかもしれません。
乱高下による投機性、そもそもの信頼性などの諸課題をクリアし、導入のメリットをどこまでアピールできるのでしょうか。メリットも多いだけに、今後の取組みに注目したいところです。
