vechainとは。流通の透明化を目指すブロックチェーン・暗号通貨の特徴や価格推移を解説
暗号通貨(仮想通貨、暗号資産)を運用するプラットフォームとして開発されたブロックチェーンは、NFTやDefiなど新しい時代のサービスへと活用の場を広げています。
そうした中で、改ざんが困難なブロックチェーンの特徴を活かした流通システムも形になりつつあります。そのひとつが、今回紹介するVeChain(ヴィチェーン・VET)です。
VeChainが流通の中でどのような役割を果たそうとしているのか、その特徴や直近の価格推移を解説します。
VeChainとは
まずは、VeChainの特徴を解説します。
ビジネスで使えるブロックチェーン
VeChainは、あらゆる規模のビジネスユーザーがブロックチェーンのテクノロジーを利用しやすくなるよう設計されたブロックチェーンです。既存のブロックチェーンで効果が実証された機能に加え、大量のデータを扱いやすくするための新しいテクノロジーを活用しています。
2015年に創業したVeChainを率いるのは、共同創設者兼CEOのSunny Lu(サニー・ルー)氏です。同氏は大手ファッションブランドの中国法人でCEOを務めたこともある経歴の持ち主で、ビジネスとブロックチェーンをつなぐことに可能性を感じ、VeChainを立ち上げました。
商品の流通を手掛ける企業がeコマースのプラットフォームを自由で手軽に選べるように、ブロックチェーン上のアプリケーションもより使い勝手のよいものにしていくのがVeChainの目的です。2020年の時点で約80の企業がVeChainを導入しており、その中には日本の製茶会社の産地証明に利用された事例もあります。
消費者にもメリットが大きい流通システムを構築
VeChainで構築された流通システムは、これまでの流通が抱えていた問題を解決し、消費者にとってよりメリットのある形を実現していく可能性があります。そのひとつが、安全面で不安のある食品の流通を防ぐ仕組みです。
汚染された食品を食べて健康を害したり、産地が偽装されていたりする問題は後を絶ちません。流通の過程で検査を受けていなかったり、結果が改ざんされていたりするなど、なんらかの悪意が働いていることは明らかです。
そうした問題の一部は、生産者やメーカー、流通会社などが管理者として存在し、悪意があればデータ等を隠したり改ざんしたりすることができてしまうことに起因します。それを防ぐものとして期待されているのが、ブロックチェーンによる追跡システムです。
VeChainのシステムで流通した食品は、消費者が商品のQRコードをスキャンするだけで、商品の出所や原材料、地理的位置、物流情報、検査報告、温度データなど、ブロックチェーンで保護された詳細情報を取得できます。そのデータには、タイムスタンプとデータを作成した当事者による暗号化署名が施されています。
PoAでスムーズな取引処理
VeChainでは、「Proof-of-Authority(PoA)」と呼ばれる取引承認システムを採用しています。VeChain Foundationによって承認されたバリデーターが、厳格な手順に基づいて承認作業を行い、働きに応じた報酬を付与します。
取引データの塊であるブロックは数秒に一度生成されるため、ビットコインやイーサリアムと比較し高速で取引を完結させることができます。
利用コストを価格変動から切り離す
VeChainブロックチェーンでは、VeChainトークン(VET)とVeThorトークン(VTHO)という2種類の暗号通貨が流通しています。
VETは、VeChainの中で迅速な価値流通を可能にする存在、つまりお金のような振る舞いをします。VTHOは、VeChainを利用するためのコストに相当し、取引承認作業の際に消費されます。VTHOはVETを一定期間保有していると自動的に付与されます。
暗号通貨をビジネスに取り入れる上で最も大きな障害の一つが、既存通貨と比較し価格変動が激しいことです。VeChainでは、コストに相当する部分をVETの価格から切り離すことにより、より利用しやすいブロックチェーンを構築しています。
VeChain(VET)の価格推移
VeChainの価格が大きく動き始めたのは2021年1月でした。暗号通貨市場全体が強気の流れを形成したことを受けVeChainも上昇。4月には約28円に達し、年明けから10倍以上の上昇を記録しました。
その後は大きく下げるものの、7月を底に再度上昇に転じ、11月には約20円まだ価格を戻しました。その後は暗号通貨市場の低迷につられる形で価格を下げ、2022年7月の執筆時点では、約3.3円で推移します。
とはいえ、この価格も2021年初から比較すると倍近い水準であり、VeChainの価値が認められつつある証拠なのかもしれません。時価総額も執筆時点で33位と、メタバース銘柄として注目を集めるSANDやMANAと近い水準にあります。
終わりに
消費者にも生産者にも安心安全な流通ネットワークの構築を目指すVeChainは、その用途を着実に広げつつあります。リアルなビジネス環境におけるブロックチェーンの活用はまだ多いとは言えないだけに、今後に注目したいブロックチェーン・暗号通貨のひとつです。
2022年7月の執筆時点で日本の暗号通貨取引所では売買できませんが、食の安全や流通に興味がある方はぜひチェックしておきましょう。