ヘリウムとは。特殊なマイニング手法で話題のブロックチェーン・暗号通貨の特徴や価格推移を解説
あらゆるものがインターネットでつながるIoTの技術は家電を中心に広がりつつありますが、セキュリティやサーバートラブルといったリスクを見逃すわけにはいけません。
今回紹介するヘリウム(HNT)は、IoTにブロックチェーン技術を活用することを目指すブロックチェーン・暗号通貨(仮想通貨、暗号資産)です。ヘリウムの主な特徴や直近の価格推移を解説します。
ヘリウムとは
まずは、ヘリウムの特徴を解説します。
IoT機器をブロックチェーンでつなぐ
携帯電話やスマートフォンの基地局を考えると分かりやすいのですが、一般には事業者負担で基地局が整備されて電波網が広がっていきます。ユーザーは一定の使用料を払ってそれを利用するわけですが、通信障害により一斉に使えなくなったり、地域によってはつながらない場所があったりと、管理者がいるがゆえの不便さもあります。
ヘリウムでは、ユーザーが専用ルーターを置くことで「ホットスポット」が設置され、一定範囲内にあるホットスポット同士がブロックチェーンでつながる仕組みになっています。ルーターの購入には一定の負担が必要ではあるものの、後述するマイニング報酬により、ホットスポット設置の動機を与えています。
ホットスポットを通じて送受信されるデータは、主にIoT機器での利用が想定されています。現状のIoT機器は、WiFiが行き届くオフィスや家庭内であったり、スマートフォン等と同じ電波網を使ったりするしかありませんが、ヘリウムの無線ネットワークが広がることで、より利便性の高い存在になることが期待されます。
ヘリウムはブロックチェーンで構築されたネットワークですので、特定のサーバーや機器がトラブルを起こしたからといって全国一斉に止まってしまうような心配はありません。従来のネットワークと比べてもハッキング耐性はきわめて高く、IoT機器をより安心して使えるようになることが期待されます。
デバイスを置くだけでマイニング報酬
ビットコインが採用する取引承認方法の「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」では、高性能なマシンを用意してマイニング作業に取り組むことで、より多くの報酬を得ることができます。しかし近年では、難易度の上昇にともない個人レベルでの参入はハードルがきわめて高くなっているのが現状です。
それに対してヘリウムは、自宅やオフィスにシンプルなデバイスを置くだけでマイニング可能であり、HNTを得られるとしています。これには、ヘリウムが取引承認方法として「プルーフ・オブ・カバレージ(PoC)」を採用していることが大きく関係します。
PoCとは、ホットスポットにルーターが正しく置かれ無線ネットワークを作り出していることを証明することで報酬が得られる仕組みです。ユーザーはただ端末を設置するだけであり、他の取引承認方法と比較してもかなり簡単で、「手軽にできるマイニング」として評判を呼んでいます。
日本では普及途上
2022年7月の執筆時点では、アメリカでは多くのホットスポットが設置されているものの、日本ではそれほど多いとはいえない状況にあります。ホットスポットは半径300メートル以内に設置できないルールを考慮しても普及の余地は大きいのですが、通信量が少ないと十分な収益が得られません。
なお、ヘリウムで検索すると多くのアフィリエイト記事が見つかります。その多くはヘリウムを絶賛しつつ勧誘する内容ですが、これはマイニング事業を営む会社の紹介報酬制度が充実しているためです。ヘリウムの実力を客観的に評価したものではありませんので注意が必要でしょう。
ヘリウムの価格推移
ヘリウムの価格が目立って上昇を始めたのは2021年に入ってからです。暗号通貨市場全体の強さもあり、5月には約2,150円に達しました。それ以降はやや停滞するものの、7月から上昇を開始。8月に約2,900円に達して一度下げた後、11月には約6,000円の最高値をつけました。
2022年に入ってからは、暗号通貨市場の不安定な状況もあり価格は下落。2022年8月の執筆時点では約1,150円付近で推移します。
終わりに
ヘリウムは、IoTにブロックチェーンを活用しようとする画期的なプロジェクトです。その成否は、ルーターの普及状況に加え実際のIoTネットワークとしての利用に耐えうるのかにもかかってくるでしょう。
2022年8月の執筆時点で日本の暗号通貨取引所での取り扱いはありませんが、独自のマイニング方式に興味がある方はチェックしておくとよいでしょう。