モネロとは。高い匿名性を保つ方法や価格推移を解説
ビットコインを始めとする暗号通貨(仮想通貨、暗号資産)は一般に、既存の通貨と比べて匿名性が高いことで知られています。この認識は正解でもあり間違いでもありますが、暗号通貨によっても匿名性には強弱があります。
今回紹介するモネロ(XMR)は、高い匿名性を売りとしている暗号通貨です。暗号通貨の匿名性について簡単に解説しつつ、モネロがどうやって匿名性を確保しているのか、直近の価格推移もあわせて解説します。
暗号通貨の匿名性とは
暗号通貨の匿名性が高いと言われるのは、送金や受け取りの際に相手の氏名や住所、銀行口座を知っている必要がないという仕組みからくるものです。例えばビットコインであれば、最大34桁の英数字からなる「アドレス」さえ知っていれば送金することができます。
その一方、ビットコインなど暗号通貨の基盤となる技術であるブロックチェーンは、その中で行われたすべての取引が公開されていることも大きな特徴です。どのアドレスからどれだけの暗号通貨が送金されたかは、少し知識があれば誰でも確認することができます。
とはいえ、アドレスと個人情報が結びつかない限りは、誰が行った取引かは分かりません。アドレスはいくつでも保有できますから、ハッキング被害にあった暗号通貨の追跡が難しいケースが多いのもそのためです。ただし現金のように証拠を完全に消すことはできないため、執念深い追跡により犯人が特定されるケースもあります。
匿名性は高いが透明性も高く、一般的なイメージとは異なりすべてが秘密というわけではないのが暗号通貨なのです。
モネロの特徴
モネロは2014年に初めて発行された、暗号通貨の中では歴史のある存在です。最大の特徴は、本来暗号通貨がもつ匿名性をさらに強化し、透明性もほぼなくしたことで非常に高い匿名性を実現したことにあります。
取引完了に複数人の署名が必要
モネロの匿名性を実現する1つ目の方法が「リングCT」です。「Ring Confidential Transactions」の略で、「リング署名」の仕組みを活用し取引の秘匿性を高める仕組みを指します。
一般的な暗号通貨の取引は1対1で行われ、送金側が署名という手続きで送金を認証した時点で取引が完了します。リング署名では、複数人が署名するまで取引が完了しません。グループ内で誰が送金したか分からず、アドレスもすぐに変わるため、送金者を特定するのは困難です。
リングCTはそれに加え、取引の金額や起源、目的地を効率よく隠し、検証可能で信頼性の高い暗号通貨の生成を可能にする方法と説明しています。
受け取りアドレスを隠す
「ステルスアドレス」の仕組みも、モネロの匿名性を高めることに貢献します。ステルスアドレスは、送金側が受け取り側に代わって、取引のたびにランダムなワンタイムアドレスを発行します。そしてそこに送金すると、受け取り側の固有アドレスにモネロが送られる仕組みです。
ブロックチェーン上にはワンタイムアドレスへの送金記録しか残らないため、そこから個人情報を特定するのは、ビットコイン以上に困難です。
PoW採用だが高性能マシンは必要ない
モネロは取引の承認方法として「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」を採用します。
ビットコインなど多くの暗号通貨に採用されている方法ですが、作業を行うマイナー間の競争を促す性質上、高性能なGPUを積んだマシンでないと競争に勝てず十分な報酬を得られない現状があります。そのため、資金力がある特定の集団がマイニングを独占したり、電力消費が大きくなったりすることが課題です。
モネロでは、ビットコインのプルーフ・オブ・ワークを改良し、高性能ではない一般的なCPUとGPUを使用するマシンでもマイニングに取り組めるようにしました。これにより、中央集権とはかけ離れた、ビットコイン生みの親であるサトシ・ナカモトの当初の構想である真のP2P通貨(取引を行うもの同士が対等の関係でつながること)を追求するとしています。
匿名性への逆風
モネロはその匿名性の高さが悪用され、犯罪資金のマネーロンダリング(資金洗浄)に使われるケースが多いと指摘されます。
各国の規制当局は協調してこの問題に取り組んでおり、高額送金時に送金者や受信者の情報を暗号通貨取引所で共有することを義務付ける「トラベルルール」を策定するなどの動きもあります。
各国の暗号通貨取引所では、これらのルールを遵守するため、モネロなど匿名性の高い暗号通貨の取引を廃止する措置が相次ぎました。2022年6月の執筆時点において、日本でモネロを取り扱っている取引所はありません。
モネロの価格推移
モネロの直近の価格上昇は、暗号通貨市場全体の動きとは異なり2020年3月頃からスタートしました。多少の波はありつつも価格は上昇し続け、2021年5月には過去最高値に近い約52,500円に達しました。その直後に急落し、それ以降は明確なトレンドが出ないまま推移しており、2022年6月の執筆時点では約15,500円で推移します。
モネロは暗号通貨市場全体の流れとは必ずしも一致しない値動きをすることが多い暗号通貨です。各国の取引所で取り扱いが中止された影響が大きいのかもしれません。チャートを見る限りは規制強化の影響は感じられないものの、今後の動向には注意が必要でしょう。
終わりに
モネロは匿名性の高さから人気を誇る暗号通貨です。匿名性の高い暗号通貨に対する規制強化の動きはあるものの、熱心なファンも多いのか一定の時価総額を維持しています。
日本国内の暗号通貨取引所では取り扱いがないため購入を推奨することはできないのですが、モネロの根幹である匿名性が今後も維持されていくのか見守っていきたいところです。