イオスとは。手数料無料ながら懸念材料も多いブロックチェーン・暗号通貨の特徴や価格推移を解説
イーサリアムの登場以降、ブロックチェーンにはスマートコントラクトが搭載されることが多くなり、さまざまな新しいサービスが登場しました。
NFTやDefiといったサービスが人気を集める一方、イーサリアムなどでは取引が混雑し、処理が遅延したり手数料が高くなったりするスケーラビリティ問題が発生するようになりました。
今回紹介するのは、イーサリアムの弱点を解決するものとして高い期待を集めて誕生したイオス(EOS)です。イオスとはどんなブロックチェーン・暗号通貨(仮想通貨、暗号資産)なのか、直近の価格推移や懸念すべき事項をあわせて解説します。
イオスの特徴
まずは、イオスの特徴を解説します。
高い注目を集めて誕生
イオスのデビューは大変華々しいものでした。2017年から実施した、暗号通貨の発行と引き換えに開発資金を調達するICO(イニシャルコインオファリング)において、約40億ドルもの資金の調達に成功したのです。当時の平均的なレートで計算すると約4,400億円に相当します。
イーサリアムのICOが18億円だったことを考えると、もちろんその当時とはブロックチェーンへの関心度合いがまったく異なるとはいえ、途方もない金額であることがお分かりいただけるかと思います。
イオスはblock.one社によって開発され、ICOを終えた2018年8月に正式なリリースを果たしました。Dapps(分散型アプリケーション)、つまりブロックチェーン上で動くアプリケーションのプラットフォームとして構築され、高速処理や手数料ゼロを武器に、「イーサリアムキラー」として大きな注目を集めました。
手数料無料
ブロックチェーンでは一般的に、あらゆる取引の処理に手数料(ガス代)がかかります。これは、取引の承認を行うマイナー、あるいはバリデーターと呼ばれる人たちに報酬を付与するためであり、こうして分散管理の中で取引を処理する仕組みを構築しています。
一方、取引の処理が遅延すると手数料は高騰する傾向にあります。より高い手数料を支払うことで優先して処理してもらえる仕組みが取り入れられているためであり、イーサリアムは一度の取引に平均で5,000円以上かかってしまう時期もありました。
それに対して、イオスでは取引にかかる手数料を徴収していません。イオスでは取引承認に参加したバリデーターへの報酬は、一定額の暗号通貨を付与することで賄われるからです。手数料があまりに高額になった場合、少額取引での利用はかなり難しくなります。その点、イオスは気軽に使える暗号通貨と言えるでしょう。
高速処理
ブロックチェーンでは、取引のデータをブロックにまとめて処理します。初期のブロックチェーンにおいてはブロックの生成間隔にゆとりが設けられているものが多く、イーサリアムが1秒間の処理できる取引データの数は、最大で15件程度とされています(2.0アップデート前)。
それに対してイオスは、最低でも4,000件程度の処理件数が実現可能であり、開発者たちは理論上100万件も可能であるとしています。
イオスがこれほどの速さを誇る理由は、「Delegated Proof of Stake(DPoS)」と呼ばれる取引承認システムにあります。ブロックチェーンにおけるメジャーな取引承認方法「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」の亜種であり、バリデーターを代表制として検証作業への参加者を絞ることで、高速処理を実現しているのです。
ライバルの多さや開発体制に懸念
スマートコントラクト対応や手数料なし、高速処理といった特徴は、イオスが発行された当初は確かに目新しいものであり、高い注目を集めました。しかし2022年現在、それに近い特徴を打ち出すブロックチェーンは多く、必ずしもイオス固有の特徴とは言えなくなっています。
ソラナやBNBチェーンが高い人気を集める上、イーサリアムも2022年内の2.0アップデートやその後の改善により、スケーラビリティ問題の解決を目指しています。
また、開発会社block.oneの能力に疑問を呈した幹部により「イオス財団」が立ち上げられたり、イオスを買い支えていた中国で暗号通貨が禁止されたりするなど、ネガティブな材料は少なくありません。
イオスの価格推移
直近でイオスの価格が大きく上昇したのは、2021年2月からでした。暗号通貨市場全体の強気ムードに乗る形で勢いよく上昇し、5月には約1,500円にまで達しました。イオスが1,000円を超えたのは、2018年以来のこととなりました。
この高値からはあっという間に下落し、それ以降は500円を挟んで推移します。2021年12月以降は、暗号通貨市場が弱気相場入りしたこともあって下落傾向に。2022年8月の執筆時点では約255円で推移します。
終わりに
イオスはブロックチェーン上でアプリを展開できるプラットフォームとして、手数料無料や高速処理を武器に高い期待を集めて登場しました。
しかし昨今では、同種の特徴を打ち出すライバルの多さに加え、経営方針の対立や詐欺被害の多発、中国の暗号通貨禁止などネガティブな材料があまりにも多いこともあり、存在感を失いつつあると言えます。
コミュニティ主導の改善策が功を奏せば復活する可能性もありますが、2022年8月現在で日本の暗号通貨取引所では売買できない暗号通貨ということもあり、積極的に購入を検討する材料には乏しいと言えるでしょう。