リスク(LISK)とは。分散型アプリの展開に適した仕組みをもつ暗号通貨の特徴や価格推移を解説
暗号通貨(仮想通貨、暗号資産)のためのプラットフォームとして開発されたブロックチェーン。その画期的な技術は、イーサリアムの成功でさまざまなサービスを運用するプラットフォームへと進化を遂げました。
今回紹介するのは、そうしたプラットフォームになるべく開発された「リスク」です。リスクの特徴やイーサリアムとの違い、直近の価格推移について解説します。
リスク
まずは、リスクの特徴を解説します。
「危険」という意味ではない
リスクは、2016年に運用が始まったブロックチェーンであり、その中で使われる暗号通貨の名称でもあります。通貨単位はLSKです。開発の拠点はドイツのベルリンにあり、さまざまなサービスを運用するプラットフォームとして開発が続けられています。
ちなみに、危険という意味を表す英単語「risk」とはつづりが違いますので注意しましょう。ネット上でリスクの情報を探すときには、カタカナではなく「LISK」と検索することをおすすめします。
サイドチェーンを構築
リスクの最大の特徴は、メインとなるブロックチェーンの「サイドチェーン」として、さまざまなサービスを展開できる点にあります。
ビットコインやイーサリアムなど利用者が多い暗号通貨のブロックチェーンは近年、取引データの処理に時間がかかったり、手数料が高騰したりするスケーラビリティ問題に頭を悩ませています。リスクでは、サイドチェーンにアプリを置いて必要な情報のみをメインのブロックチェーンとやり取りすることで、よりスムーズに取引の処理を行える仕組みを構築しました。
アプリ側になんらかの問題が発生したときも、サイドチェーンを切り離すことでメインのブロックチェーンへの影響を最小限に食い止められることもメリットとされます。
JavaScriptで開発できる
リスクのプログラミング言語として用いられているのはJavaScriptです。JavaScriptはもっとも利用者が多いプログラミング言語ですので、世界中のエンジニアが開発に加わりやすい利点があります。
対応アプリの充実が鍵を握るリスクのようなブロックチェーンにとって、これは大きなアドバンテージとなるでしょう。
代表者を投票で選出
ブロックチェーンにおける取引承認システムとしてメジャーなのは、ビットコインなどが採用する「Proof of Work(プルーフ・オブ・ワーク、PoW)」と、イーサリアムが移行を進める「Proof of Stake(プルーフ・オブ・ステーク、PoS)」です。
リスクはそのうち、PoSを改良した「Delegated Proof of Stake(DPoS)」を採用します。間接民主制のようなシステムで、まずリスクの所有者が101名の代表者を選びます。選ばれた代表者は「フォージング」と呼ばれる作業にあたり、成功すると報酬としてリスクが配布されます。
プルーフ・オブ・ワークは暗号通貨の取引承認システムとしては依然として主流の位置にありますが、近年は高性能なマシンを持つ一部のマイナー(作業を行う人)に作業が集中する中央集権化が危惧されるほか、電力を大量に消費するとして批判の対象になっています。
時価総額でビットコインに次ぐ位置にあるイーサリアムが2022年内にプルーフ・オブ・ステークに移行することもあり、ステーキングやそれに近いシステムを採用する暗号通貨が注目されやすい環境にあります。
2021年8月にアップデート
リスクは2021年8月、「Lisk v3」とするアップデートを行いました。このアップデートにより、取引データの処理能力は5倍ほどに上昇し、取引手数料も最大98%安くなったとのことで、スケーラビリティ問題への積極的な対処をアピールしています。
また、時期は未定ながら他のブロックチェーンとの相互運用を可能にするアップデートも予定されています。
リスクの価格推移と今後の動向
リスクの最高値は2018年1月につけた約3,800円です。それ以降は低迷状態にありましたが、2021年2月以降、暗号通貨市場全体の活況を受けて価格が上昇し、5月には約1,000円をつけました。
その後は大きく下降するものの、8月のアップデートへの期待から再度上昇。約560円をつけますが、アップデート後は再び下降し執筆時点では約180円で推移します。
日本国内の暗号通貨取引所でも、リスクを保有しているだけで代表者を選ぶ投票に自動的に参加でき、ステーキング報酬を受け取れるサービスを実施しているところがあります。人気のサービスでしたが、執筆時点(2022年6月)ではアップデートでステーキングの仕組みが大きく変わったことを理由に一時停止されています。
日本国内で取引所によるステーキングサービスが再開するかどうかは不明ですが、再開のタイミングではリスクに買いが入り価格が上昇する可能性がありますので、興味がある方は情報をチェックしておくとよいでしょう。
終わりに
リスクが採用するサイドチェーンの仕組みは、多様なサービスを展開するプラットフォームとして成長しつつある近年のブロックチェーンにおいて注目されるもののひとつです。他のブロックチェーンと連携できるアップデートが行われれば、その特徴を存分に発揮できることが期待されます。
日本では暗号通貨取引所によるステーキングサービスが停止していることもあり、保有する動機はやや低くなっているのは否定できませんが、今後に注目したい暗号通貨のひとつです。