ニアプロトコルとは。イーサリアムの弱点を解決するブロックチェーン・暗号通貨の特徴や価格推移を解説
ブロックチェーンは今や、暗号通貨(仮想通貨、暗号資産)を運用するプラットフォームの枠を超え、NFTやDefiといったこれまでになかったサービスを展開する場として利用が広がっています。
そうしたサービスの主戦場はイーサリアムですが、利用の増加とともに取引処理の遅延や手数料の高騰といった問題が発生するようになりました。
今回紹介する「ニアプロトコル(NEAR)」は、イーサリアムが抱える問題を解決するものと期待される暗号通貨・ブロッチェーンです。ニアプロトコルの特徴や直近の価格推移を解説します。
ニアプロトコルとは
まずは、ニアプロトコルの特徴を解説します。
ビットコインやイーサリアムの課題を解決する
ニアプロトコルは、スイスを拠点とする非営利組織「ニア財団」によって開発およびサポートが行われているブロックチェーンです。分散型アプリケーションを展開するためのプラットフォームとして構築されました。ブロックチェーン内で使われる暗号通貨は「ニア」です。
ビットコインやイーサリアムは、「ユーザビリティ」「スケーラビリティ」「セキュリティ」の3つの課題を抱えているとしており、ニアプロトコルはそれらをすべて解決するプラットフォームであるとしています。
シャーディングでスケーラビリティ問題に対処
ニアプロトコルは、スマートコントラクトに対応しています。スマートコントラクトとは、契約を自動で実行する仕組みのことであり、管理者のいないブロックチェーンがさまざまなアプリケーションを動かすために必要不可欠なもののひとつです。
最初にスマートコントラクトに対応したイーサリアムでは、NFTやDefi、ゲームといったサービスが次々と集まり活況を呈していますが、それとともに取引処理の遅延や手数料の高騰といった「スケーラビリティ問題」が起こるようになりました。
イーサリアムの開発者も対策を進めていますが、それ以外のさまざまなブロックチェーンが、スケーラビリティ問題の解決をうたいサービスの充実を図っています。ニアプロトコルもそのひとつで、「シャーディング」という仕組みを導入することで、イーサリアムをはるかに凌駕する取引処理速度を実現しました。
ブロックチェーンは基本的に、すべての取引をひと続きで処理します。ニアプロトコルのシャーディングでは、検証を行う「バリデーター」の担当範囲を「シャード」という小さい単位に分散させ、それぞれを並行処理することにより取引処理速度の高速化を図りました。シャーディングの実現は段階的に行っており、2022年中の完了が予定されています。
他のプロックチェーンと相互運用可能
ニアプロトコルは、他のプロックチェーンとの相互運用も積極的に対応しています。
プロジェクトの一つ「オーロラ」はEVM(イーサリアム仮想マシン)互換に対応しており、イーサリアムのアプリケーションをほぼそのまま移植可能です。それにより、新たに開発する作業を省きつつ、ニアプロトコルの速い取引処理や手数料の安さを享受することができます。
そのほか、ニアプロトコルとイーサリアムをつなぐ「レインボーブリッジ」で相互に送金が可能な仕組みを整備したり、「オクトパスネットワーク」ではイーサリアムやIBC対応のブロックチェーンとの相互運用が可能にしていたりします。
環境にやさしいブロックチェーン
近年は企業経営における環境問題への取り組みを見る目も厳しくなりつつあります。ブロックチェーンもその例外ではなく、ビットコインの取引承認方法である「プルーフ・オブ・ワーク(PoS)」が大量の電力消費をもたらしていると批判され、価格下落の材料になったこともありました。
ニアプロトコルでは、ネットワーク全体としてカーボンニュートラルであることを目指しています。脱炭素ビジネスを展開するサウスポール社と連携し、ニアプロトコルで排出される二酸化炭素の量を測定した上で、それを相殺するだけの植林をするプロジェクトを支援しています。
環境問題への取り組みが投資判断に影響する近年においてこれは重要なことであり、より多くのプロジェクトをニアプロトコルに引きつける大きな材料となります。
ニアプロトコルの価格推移
ニアプロトコルは発行からまもないこともあり、他の暗号通貨とはやや異なる値動きを見せています。
2021年の初めから、暗号通貨市場の好調さを受けて上昇を始め、3月には約800円をつけました。その後は市場全体の動きからは離れて下落し、7月後半に底値をつけています。そこから力強い動きを見せ、年後半にかけて上下はありつつも上昇を続け、年が明けて2022年1月には約2,300円の最高値をつけました。
それ以降は下落するものの、2月後半から再度上昇し約2,200円まで価格を戻します。直近では市場の停滞を受けて価格を落とし、2022年7月の執筆時点では約500円で推移します。
終わりに
ニアプロトコルは、イーサリアムのスケーラビリティ問題を解決するブロックチェーン・暗号通貨です。環境問題への取り組みを積極的に進めている点は、さまざまなプロジェクトを呼び込む上で大きな材料となるでしょう。
2022年7月の執筆時点では日本の暗号通貨取引所で取り扱いがありませんが、今注目のテーマに関連する暗号通貨だけに、その動向をチェックしておくとよいでしょう。