分裂で誕生した暗号通貨ビットコインキャッシュとは。ビットコインとの違いや特徴、価格推移を解説
暗号通貨(仮想通貨、暗号資産)は、新規プロジェクトの立ち上げやアップデートによって誕生することがほとんどですが、ときには既存の暗号通貨が分裂して誕生することもあります。
今回紹介するのはそのひとつ「ビットコインキャッシュ」です。名前の通りビットコインにルーツがある暗号通貨なのですが、どのような経緯で誕生したのでしょうか。ビットコインとの違いや特徴、価格推移とあわせて解説します。
ビットコインキャッシュが生まれた理由
まずは、ビットコインキャッシュの誕生に至った背景を解説します。
ビットコインのハードフォークで誕生
ビットコインキャッシュは、ビットコインのハードフォークによって誕生した暗号通貨です。ハードフォークとは、ブロックチェーンが分岐して複数のチェーンに分かれることを言います。
ハードフォークはブロックチェーンの大規模なアップデートによって実施されることがほとんどで、基本的には全面的に新しいブロックチェーンに移行し、古いブロックチェーンは破棄されます。ごくたまに古いブロックチェーンにもユーザーが残り、新しい暗号通貨をつくって運営が続けられる場合があります。
コミュニティの対立でハードフォークが発生することもあります。かつてイーサリアムでは、ハッキングにかかわる取引を無効にするか否かで意見が分かれました。その際、イーサリアム本体はハッキングを無効にした新しいブロックチェーンに分岐し、従来のブロックチェーンは「イーサリアムクラシック」と名前を改めました。
ビットコインキャッシュも、コミュニティの対立によりビットコインがハードフォークして誕生した暗号通貨です。
スケーラビリティ問題で対立
ビットコインキャッシュが誕生した背景には、ビットコインのスケーラビリティ問題がありました。ピットコインの取引量が急増したことで取引データの処理が追いつかなくなり、取引の完了に時間がかかったり、手数料が高騰したりする問題が顕在化していたのです。
ビットコインの取引データの処理が追いつかなくなったのは、取引データそのものが増えたのはもちろんのこと、取引データをまとめるブロックのサイズにも原因がありました。ビットコインのブロックサイズは現在に至るまで1MB(メガバイト)で固定されていますが、これを拡大してはどうかとの主張が出始めたのです。
ブロックの生成間隔は決まっており、サイズを大きくすれば同じ時間で処理できる取引データの数は増えます。一見すると問題がないようにも思えますが、攻撃を受けたときの被害が大きくなること、大きなブロックを処理するには高性能なマシンが必要となり、力のあるマイナーばかりが生き残る中央集権化が進むなどの問題が指摘されています。
ビットコインコミュニティの意見対立は激しさを増し、結果としてブロックサイズの拡大を主張する開発者たちが離れる形でハードフォークが実施され、2017年8月にビットコインキャッシュが誕生しました。
ビットコインキャッシュの特徴
ハードフォークによって誕生したビットコインキャッシュはビットコインとはいくつかの点で違いがあります。
ブロックサイズ
開発者たちの主要な主張の一つであったブロックサイズの拡大は、ビットコインキャッシュへの移行により実施されました。当初は8MBからスタートし、後に32MBまで拡大されました。
ブロックサイズの拡大により、ビットコインキャッシュはビットコインと比較しスムーズに決済が完了します。
スマートコントラクト
取引の匿名性を重視するビットコインは計算コストが大きく、イーサリアムのようにNFTやDefiといったサービスをブロックチェーン上で展開する仕組み(スマートコントラクト)には対応していませんでした。
一方のビットコインキャッシュでは、ブロックサイズ拡大などによってブロックチェーンに余裕ができ、スマートコントラクトへの対応が可能になりました。ビットコインの性質を受け継ぎながらイーサリアムのような使い方もできる暗号通貨としての脱皮が図られています。
分裂を繰り返す
ビットコインからハードフォークして誕生したビットコインキャッシュですが、その後も複数回のハードフォークによる分裂を経験しており、そのたびに「ビットコインSV」「eCash」といった新しい暗号通貨を誕生させてきました。
それぞれの開発者たちが自らの理想を追求した結果ではあるものの、所有者としては頻繁に分裂しコミュニティが小さくなっていく暗号通貨に不安を覚える人も少なくはないでしょう。分裂を伴うハードフォークのたびに、ビットコインキャッシュは価格を下げてきました。
ビットコインキャッシュの価格推移
分裂のたびに価格を下げるビットコインキャッシュですが、大きく見ると暗号通貨市場全体の流れに沿った値動きをしていると言えます。
直近では、多くの暗号通貨が高騰した2021年5月に16.8万円弱の価格をつけました。ただこの価格も2017年12月の約44.3万円には遠く及ばず、分裂が繰り返されることによる投資家の不信感が表れているのかもしれません。
執筆時点(2022年6月)時点では、暗号通貨市場全体の低迷もあり2.2万円台で推移します。ビットコインキャッシュは日本でも多くの暗号通貨取引所で売買できます。興味がある方は動向をチェックしておきましょう。
終わりに
ビットコインキャッシュは、ビットコインのブロックサイズを拡大したり、スマートコンストラクトに対応したり、「ビットコインのあったかもしれない未来」を見せてくれる暗号通貨です。
何度かの分裂を経てもなお高い存在感を示しており、今後に期待する投資家も多いことが伺えます。コミュニティの動きに注意を払いつつ、ビットコインキャッシュがどんな進化を続けていくのか注目しましょう。