ファイルコインとは。新しいデータ保存のあり方を提示するブロックチェーン・暗号通貨の特徴や価格を解説
情報社会の進展に伴い、私たちは日常生活やビジネス、その他さまざまな場面で大量のデータを取り扱います。データは私たちの生活を便利にしてくれる一方で、大量のデータをどこに保管するか、攻撃者からどう守るかといった問題がついて回るようになりました。
今回紹介するファイルコイン(FIL)は、ブロックチェーンの特性を生かした分散管理により、大量のデータを安全に保管するブロックチェーン・暗号通貨(仮想通貨、暗号資産)です。本記事では、ファイルコインの特徴や直近の価格推移を解説します。
ファイルコインとは
まずは、ファイルコインの特徴を解説します。
P2P方式でデータを保存
ファイルコインは、ファイル(データ)を保存するためのピアツーピア(P2P)ネットワークです。データを長期間にわたって確実に保存されるよう、経済的なインセンティブを与える仕組みを組み込んでいます。
ファイルコインのユーザーは、自分のファイルをストレージプロバイダに保存するためにお金を支払います。ストレージプロバイダーとは、ファイルを保存し、長期間にわたって正しく保存されていることを証明する責任を負うコンピュータです。
自分のファイルを保管するのはもちろんのこと、他のユーザーのファイルを保管して報酬(FIL)を得ることもできます。利用可能なストレージとその価格はオープンであり、一企業によって決定されることはありません。
ブロックチェーンで強固に保管
ファイルコインのユーザーは、自分のニーズに適したストレージプロバイダを選択することができます。具体的には、コストやシステムの強固さ、スピードなどを総合的に判断して選択します。ストレージプロバイダは、ネットワークに参加する前に入念なチェックを受けます。
ファイルコインのブロックチェーン上にある証明を見ることで、自分のファイルが正しく保存されていることをいつでも確認できます。ブロックチェーンの特性上、ファイルコインに参加するすべての人が取引の検証を行っていますので、改ざんされる可能性もほとんどありません。
取引の検証には、Proof of Replication(PoRep)と呼ばれる方法を採用します。ビットコインなどが採用する「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」とは異なり継続的に実行し続ける必要がないため、計算効率が高く環境への負荷も少ない特徴があります。
DropboxやGoogleCloudといった企業運営のクラウドサービスと比較すると、分散管理のためサーバー等のトラブルにも強く、一方的に契約条件が変更されるといった心配もありません。
IPFSがHTTPの弱点を解決する?
ファイルコインでは、IPFSと呼ばれる技術が使用されています。「InterPlanetary File System」の略で、現在のインターネットの主流であるHTTP技術を補完、あるいは置き換えるものとして期待されています。
HTTPでは、サーバー管理者はユーザーからのアクセスに常に応える必要があり、大量のアクセスや不正行為にも耐えられる環境を用意しなければなりません。情報は管理者が一元的に管理することになるため、ひとたびトラブルが生じると大量のデータが破損したり流出したりすることもあります。
それに対してIPFSでは、その情報がどこ(アドレス)にあるかではなく、どういう内容かに着目して情報にアクセスします。コンテンツにハッシュ値を設定し、ハッシュ値からコンテンツを探して表示します。
ハッシュ値さえ同じであればどこにあっても同じコンテンツが表示されますから、特定のサーバーがダウンしても別のところからアクセスが可能です。また、より近いサーバーにアクセスできたり、検閲を困難にしたり、改ざんをきわめて困難にしたりといった特性もあります。
ファイルコインの価格推移
ファイルコインの価格は、2020年5月頃まではおおむね1,000円以下の水準で推移してきました。6月に入りじわじわと上昇を始めると、2021年1月より暗号通貨市場の強気ムードに乗る形で急上昇。3月末には20,000円を突破しました。
その後は急落するものの7月から再度上昇を始め、9月には12,000円台を回復しました。それ以降は暗号通貨市場の停滞を受けて価格は下落し、2022年8月の執筆時点では約1,100円で推移します。
終わりに
ファイルコインは、データ保存のあり方のみならず、インターネットの根本すら変えてしまう可能性があるブロックチェーン・暗号通貨です。
2022年8月の執筆時点で国内暗号通貨取引所での売買には対応していませんが、クラウドサービスは今後ますます伸びていくジャンルと予想されるだけに、高い関心をもって見ていきたいところです。