ステーブルコインとは?乱高下しない暗号通貨の魅力と注意点を解説
新しい通貨として注目を集める暗号通貨。仮想通貨とも呼ばれます。インターネット上の取引において利用が広がっていますが、それ以上に人々を惹きつけるのは、他のさまざまな投資対象に比べて魅力的な値動きかもしれません。
そんな暗号通貨とは一線を画し、より安定した値動きをするように設計された「ステーブルコイン」が人気を集めています。
本記事では、ステーブルコインの特徴や人気を集める理由、代表的なステーブルコインである「テザー」の特徴や注意点を解説します。
ステーブルコインとは
まずは、ステーブルコインの特徴を解説します。
価格の変動を抑える暗号通貨
ステーブルコインは、価格の安定を目的として開発された暗号通貨です。暗号通貨はダイナミックな値動きが多くの投資家に注目される一方、支払手段として安定性に欠けるのが課題と言われてきました。
そのためステーブルコインでは、例えば「1ドル=1コイン」のように他の通貨と連動した値動きにすることで価格変動を抑え、支払い時の不安定さをなくすことが期待されています。暗号通貨は一日で10%以上も上下することがたまにありますが、円やドルがそうなることはまずありません。
既存通貨と連動するタイプが人気
ステーブルコインの中で流通量が多いのは、既存の通貨と連動するタイプです。暗号通貨と比べて価格変動が少ないため、支払手段として安定しています。
暗号通貨と連動するステーブルコインもあります。分散管理の特徴が保たれる一方で、価格変動が大きいため安定性には欠きます。そのほか、商品価格と連動するものやアルゴリズムで調整するものもありますが、それほど一般的ではありません。
通貨安の救世主にも?
支払手段以外にも、自国通貨が不安定な国民にもステーブルコインは利用価値があります。
自国通貨が通貨安に見舞われたとき、輸入品の価格が上昇するなど国民の生活に悪影響が出ます。昨今の日本でも、円安による景気浮揚効果は弱くなる一方で、エネルギーや食料など輸入に頼っている品目の価格が上昇し生活が苦しくなる状況が指摘されています。
他国では、ジンバブエやアルゼンチンのように極端な通貨安が進んで自国通貨が信用をなくし、ドルなど信頼できる通貨に両替しようとする動きが出ることがあります。一方で、このような状況下では政府が外貨の流出を防ぐために両替を制限します。
暗号通貨であるステーブルコインは、インターネットさえあれば利用できますので、資金の逃避先として重宝されます。近いところでは、2022年のウクライナ侵攻に伴ってロシアのルーブルが下落したとき、ルーブルをドルと連動した「テザー」に両替する動きが活発になりました。
テザーの特徴や注意点
最後に、ステーブルコインの中でも特に高い人気を誇る「テザー」について解説します。
時価総額上位の人気
ステーブルコインの代表的な存在であるテザーは、1ドルが1テザーになるよう設計された、「テザー社」が発行する暗号通貨です。
海外の暗号通貨取引所では、テザーを基準に他の暗号通貨を購入したり売却したりといった取引をベースにしているケースも少なくありません。既存通貨と暗号通貨をやりとりするより、暗号通貨同士のほうがコストがかからずスムーズだからです。
安定した資産としてのテザーの人気は年々高まっており、時価総額では執筆時点(2022年4月)でビットコイン、イーサリアムに続く上位グループに位置しています。
テザー疑惑とは
2018年の1月、テザー社にある疑惑が持ち上がりました。それは、流通しているテザーと同量のドルを余裕していないのではないかというものです。
もしそうであれば、テザー社は資金の裏付けなくテザーを発行していることになります。ビットコインなど他の暗号通貨が下落したタイミングでテザーを発行し買い漁っているのではないかとの観測も流れました。
テザーが暗号通貨取引所での交換手段として確固たる地位占めていることもあり、この問題は暗号通貨市場全体を動揺させましたが、これといった結論を得ることなく今に至ります。
テザー社は健全な運営状況であることを強調していますが、ドルと連動しているとはいえあくまでテザー社が発行している暗号通貨であり、ドルほどの信頼性はないということを理解しておく必要があります。
日本でテザーは買える?
長期的な円安を予想している方の中には、FXや外貨預金に代わる手段としてテザーの購入を検討している方がいらっしゃるかもしれません。
執筆時点では、日本の暗号通貨取引所でテザーは取引できません。日本の金融庁は、国内に登録のある暗号通貨取引所を利用することを推奨しており、日本国内でテザーを購入するハードルは高いのが現状です。
日本と法規制が異なること、言語の壁があることなども考えると、海外の暗号通貨取引所を利用することはおすすめできません。国内で安心して取引できるようになるのを待ちましょう。
終わりに
良くも悪くも価格が乱高下するのが特徴の暗号通貨において、価格の安定を目的にしたステーブルコインは、暗号通貨の可能性を大きく広げるものとして着実に広まりつつあります。
世界各国で中央銀行が主導するデジタル通貨の研究が進む中で、民間のステーブルコインが存在感を示し続けるのか注目されます。